孕む身体を奪取する〈妊婦〉アート論

〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する

山崎 明子 編著, 藤木 直実 編著
A5判 152ページ 並製
定価:2400円+税
ISBN978-4-7872-7410-6 C0070
奥付の初版発行年月:2018年01月/書店発売日:2018年01月30日

在庫あり
孕む身体と接続したアートや表象――妊娠するラブドールやファッションドール、マタニティ・フォト、妊娠小説、胎盤人形、日本美術や西洋美術で描かれた妊婦――を読み解き、妊娠という女性の経験を社会的な規範から解き放つ挑発的な試み。

版元から一言

菅実花の作品『ラブドールは胎児の夢を見るか?』は、妊娠した女性型愛玩人形を写真に収めるアート・プロジェクトで、見る者の「常識」と「感性」を揺るがし、大きな話題になった。

菅の作品の問題提起を受け、孕む身体と接続したアート――マタニティ・フォト、妊娠小説、妊娠するファッションドール、胎盤人形、日本美術や西洋美術で描かれた妊婦――から、女性の身体経験が社会にどう意味づけられ、人々はそこに何を読み込むのかを照らし出す。

様々な表象で分断される妊娠という女性の経験を社会的な規範から解き放つ挑発的な試み。

著者プロフィール

山崎 明子(ヤマサキ アキコ)

1967年、京都府生まれ。奈良女子大学研究院生活環境科学系准教授。専攻は視覚文化論、美術制度史、ジェンダー論。著書に『近代日本の「手芸」とジェンダー』(世織書房)、共著に『歴史を読み替える』(大月書店)、『視覚表象と音楽』(明石書店)など。

藤木 直実(フジキ ナオミ)

1968年、東京都生まれ。日本女子大学ほか非常勤講師。専攻は日本近現代文学、ジェンダー論。共著に『昭和前期女性文学論』『大正女性文学論』『明治女性文学論』(いずれも翰林書房)、『日本文学の「女性性」』(思文閣出版)、『神経症と文学』(鼎書房)など。

目次

序 章 妊婦表象は何を語るのか 山崎明子
 1 ユートピア的想像力が生み出す女性像
 2 表象は不在を補う
 3 ディストピアとしての妊娠

第1章 未来の母としての「妊娠するアンドロイド」をめぐって 菅 実花
 1 アンドロイドと性
 2 比喩としてのアンドロイド
 3 サイボーグとしての人間
 4 妊娠しないアンドロイド
 5 ラブドールは胎児の夢を見る
 6 フランケンシュタイン・コンプレックス
 7 怪物の花嫁と未来の母

第2章 マタニティ・フォトをめぐる四半世紀――メディアのなかの妊婦像 小林美香 
 1 記念写真としての「マタニティ・フォト」の成り立ち
 2 マタニティ・フォトの様式と儀式化
 3 SNSで共有される妊活・妊娠体験――自撮り世代の妊婦像
 4 「グラマラス(魅力的)な妊婦」――母であり、女であり、プロフェッショナルであること
 5 記号的表現としてのマタニティ・フォト――その受容と変奏

第3章 「妊娠」を奪取する――女性作家による「妊娠」表象を読む 藤木直実
 1 二十世紀初頭の文学場とジェンダー
 2 「妊娠」と愛国――与謝野晶子「産褥の記」
 3 悪女の「妊娠」――内田春菊「ファザーファッカー」
 4 「妊娠」を奪取する――村田沙耶香「殺人出産」

第4章 「あるべき」女児用人形とは何か――「妊娠」した女児用人形をめぐって 吉良智子
 1 近代化(ジェンダー化)された人形と「良妻賢母」教育
 2 戦後日本における人形の身体の変化
 3 ファッションドールにおける「妊娠」した人形のディスクール
 4 あるべき「女児用人形」とは何か?

第5章 胎盤人形――見世物と医学と美術のはざま 池川玲子
 1 謎の「胎盤人形」
 2 模型から見る西洋助産史
 3 模型から見る日本の助産史
 4 考察、あるいは合成実験

第6章 日本美術に描かれた「妊婦」――中世の仏教思想と産む身体へのまなざし 池田 忍
 1 孕む身体の不在
 2 性愛と妊娠
 3 出産の光景

第7章 妊婦と人形がアートのうえで出会うまで 香川 檀
 1 〈禁断のエロス〉と寓意
 2 女性が描く/描かない〈自然としての妊娠〉
 3 ポストヒューマンの時代の〈義胎化〉――人工胎盤からラブドールへ

あとがき 藤木直実